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平和を造り出す力

私は人生の大いなる苦悩の一つは、われわれが完 成できないものを常に完成しようとしていることだ と思います。われわれはそうするように命じられて います。 人生は打ち破られた夢の耐えざる物語です。マハ トマ・ガンディーは何年も何年も彼の民の独立のた めに働きました。しかしガンディーは暗殺されて、 失意の内に死んでしまいました。なぜなら彼が統一 しようと望んだ国は、ヒンドゥー教徒とイスラム教 徒の争いの結果、インドとパキスタンに分裂してし まったからでした。 ウッドロウ・ウィルソンは国際連盟の夢を抱いて いました。しかし彼はその約束が果たされる前に死 んでしまいました。 使徒パウロはある日、スペインに行く望みについ て語りました。スペインに行って、その地に福音を もたらすのが、パウロの最大の夢でした。しかしパ ウロは決してスペインには到達できませんでした。 彼はローマの獄房で人生を終えました。これが人生 の物語です。 われわれの先祖たちの多くも、自由についてよく 歌いました。そして奴隷制の懐から、つまり長い不 正の夜から脱出できる日を、夢見ていました。そし て「だれも私の経験した悩みを知る者はいない。イ エスの他はだれもいない」というような小 さな歌を、 歌いました。彼らは彼らの夢を抱いた時に、よりよ い日について考えていたのでした。そこで次のよう にも歌いました。「悩みはいつまでも続くものでは ないからうれしい。まもなく、まもなく私はこの重 荷を下ろすことになる」。彼らがそのように歌った のは、強力な夢を持っていたからでした。しかし多 くの人々はその夢の実現を見ずに、死んでしまいま した。 ところでみなさん一人一人も、何らかの神殿を立 てていることと思います。そこには常に戦いがあり ます。ところが戦いは、時々は落胆を招きます。時 々は幻滅を招きます。ある者は平和の神殿を建てよ うとしています。私たちは戦争に反対し、抗議しま す。しかし私たちは不可能なことを試みているよう に思われることがあります。その努力は無に帰して いるように思われます。

そこで私たちが平和の神殿を建てようとする時にはし ばしば、私たちは一人取り残されて落胆し、困惑して しまいます。 それが人生の物語です。ところがうれしいことに、 私たちは時の経過を貫いて叫んでいる一つの声を聞く ことができます。 「それは今日実現できないかも知れない。また明日も 実現できないかも知れない。しかしあなたが心にそう 思ったことはよいことである。あなたが試みているこ とは、よいことである」と

平和を造り出す力 非暴力行動の現代的意義 (1984 年) (新教新書) 参考にしました。

                              泉 清隆

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