「業 火」 金子純雄
- 3月5日
- 読了時間: 3分
3・11を迎えるたびに、私はそれが何処なのか定かに
は思い出せませんが、数日後に観たTVが映し出してい
た石油コンビナートらしい処が燃えて広がり、炎と噴煙
が空を覆っている映像を思い出します。神戸・淡路大震
災の時もそうでしたが、燃え盛る火の中を逃げ惑う人々
の姿が80年前の福岡大空襲の体験と重なります。
前者は地震や津波と言う自然災害によるものと言う
一面があり、後者は明らかに人為的なものですから、並
列的に論じることは出来ないとは思いますが、果たしてそ
う言い切れるでしょうか。
人類の歴史は「火」を発見し、自ら作り出すことによっ
て発展を遂げてきたと言われます。他の被造物、ことに霊
長類の中でも、「火」を発見した人類は、それを自ら作り
出す知恵と技術を身に着けたことで、所謂「文明」社会
を生み出し、今日に至ったことは論じるまでもありませ
ん。
火は光としても用いられました。東日本大震災の時、
停電のために真っ暗になった家の中を照らしてくれたの
はロウソクの火でした。電線がつながり回復するまでの
間、ロウソクの火を囲むように食事をし、布団に身をくる
みながら思い起こしたのは、戦時中の「灯火管制」でし
た。空襲のために飛来する敵機に光が漏れないようにと
当局から厳命されていました。しかし、レーダーを備えた
最新鋭のB29爆撃機の編隊には余り痛痒はなかったよ
うです。所謂「縦断爆撃」に福岡全市が焼野ケ原になっ
た情景が今も脳裏に鮮やかに蘇ります。人類が生み出
した火が、自然を焼き尽くし、人間社会を崩壊させるほど
の暴威を奮っている実例は戦争は勿論ですが、枚挙に
暇がありません。昨今、多発している森林火災も含めて、
人間が発見し、その恩恵に浴して来た「火」が、今や牙を
剥いて、進化を誇り、文明社会を謳歌する人間に襲い掛
かっている様相は何を語り、暗示しているのでしょうか。
僅か一燭光に過ぎないロウソクの火を抱え込むように
して共に過ごした数日間は私たち家族にとっては、今や
「懐かしい」思い出です。しかし、被害をモロに受け、愛す
る家族を津波に攫われた人に加えて、今なお崩壊し,解
決のめども立っていない福島原発の放射能汚染に怯え
る人々の苦悩や悲哀は決して収まってはいません。また、
他人事ではないはずです。
「自然災害」と言われる東日本大震災の中には、人間が生
み出したおぞましい人為的な要素も決して少なくはありませ
ん。福島の原発事故は、その最たるものだと思います。
所謂「業火」の背景には、如何に弁辞を弄したとしても、
戦争をはじめ明らかに「人の罪」が潜んでいます。真剣な悔
い改めと、それに基づく新しい生き方が改めて求められてい
る所以ではないでしょうか。


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