top of page

「泥沼からの生還...破壊的カルト宗教の被害」 泉清隆

聖書教育誌に掲載された、カルトからの脱会を支援されている枝

光教会の岩崎一宏牧師の文章より引用します。

私は、枝光教会に赴任して以来、22年にわたり破壊的カルト宗

教(以降「カルト」と表記する)による被害者の支援に取り組んで

いる。カルト問題とは所謂、異端問題ではなく、正体を隠した勧誘

や多額の献金の要求、合同結婚式と称して、婚姻の自由を奪い信者

同士で結婚をさせる等の違法性や人権侵害の問題である。カルトか

らの脱却は容易なことではない。マインド・コントロール状態にあ

り、教団による反対派対策によって、家族や支援者をサタンの手先

と信じ込まされ、接触を頑なに拒む人を脱会へと導くことは困難を

極める。相談家族の中には途中で諦めてしまうケースも多い。妻が

入信した夫は、献金を続ける妻を何度も注意し脱会の約束を交わす

が、ことごとく裏切られついには財産のすべてを失う。子が入信し

た親は、集団の危険性を知らせ脱会させようとするが、それを教団

に対する迫害として受け止め、かえって信仰を篤くする子を前にど

うすることもできない。最後には離婚や勘当という手段を選ばざる

を得なくなる。

以前、統一教会に娘を奪われたKさん夫妻からの相談を受けた。

ある日、遠方で社会人として一人暮らしをしていた娘との連絡が途

絶えた。娘は、統一教会に入信し、合同結婚式を経て韓国人男性と

入籍し渡韓していた。手がかりは娘から届いた一枚のハガキに記さ

れた住所だけであった。娘を救出するには僅かな可能性しかなかっ

たが、Kさん夫妻は諦めなかった。片道四時間の道程を何度も教会

に通われ準備をされた。Kさんは、地元の郵便局長として勤めてお

られたが、娘を救出するために退職する決断をし、勤務する局を管

轄する部署へ出かけて退職届を提出した。その理由を尋ねられたK

さんは、事の次第を告げ「これは私たち家族だけの問題ではない。

娘はこれから信者として多くの人を伝道し、また違法な物売りに手

を染めることになるだろう。今はカルトの被害者の娘がこれから新

たな被害者を生みだす加害者となっていく。娘が、私たち家族と同

じ苦しみを他人に与えることが分かっていながら、親として放って

おくわけにはいかない。残りの生涯をかけて娘を脱会させる」と言

って退職届を出したという。

その後Kさん夫妻は何度も韓国に洩り、娘と接触をし続けた。母

親は、娘を赤ん坊のように抱きしめて「辛い時にはいつでも帰って

おいで」と、涙を流しながら語りかけた。時には教団側の指示によ

って会うことを拒まれ悔しい思いをしながら帰国することもあっ

た。それでも両親は、異国の地に暮らす娘を片時も忘れることなく

その想いを注ぎ続けた。それから約二年後に両親の想いが娘の心に

届く日が来た。歯の治療のために単身で帰国した娘に、父親は「年

老いた自分たちに残された時間は少ない。次に会えるかどうかも分

からない。親としての最後の頼みだ。牧師と会って検証をしてほし

い」と頭を下げた。娘は、両親の願いを受け入れて枝光教会にやっ

て来た。

青年期の貴重な時間と財産を捧げ、見知らぬ外国人との結婚を決

意するほど、絶対的なものとして教団とその教祖を信じてきた者が、

その実態を直視し、信仰の誤りを認めて受け入れることはたいへん

なことだったと思う。「結婚生活をどうすればいいのか、これから

どうやって生きていけばいいのか」...。検証の日々と脱会の決断は、

彼女にとって、底知れぬ深い闇の中にその身を投げるようなことで

あったと思う。

しかし、両親はその娘に繰り返し語り続けた。そしてついに両親の愛が、

統一教会の偽りの愛に勝り、娘を取り戻す日がやってきた。

この家族と関わりながら私は多くのことを考えさせられた。「家族の

絆とは」、「苦難を前にしての覚悟」、「社会に対する責任」、「正直に生き

ることの大切さ」、「信じ続け待つこと」。かつて父親は私に「泥沼の中

に沈み苦しみもがいている娘を助け出すためには、自分もまたその中に

飛び込んで行くしかない」と言っていた。実際に両親は、大きな犠牲を

払いながら泥沼の中へと飛び込んで行った。脱会後、娘は「父親はもと

もと強く厳しく威厳のある人でした。幼い頃から父親は、とてもとても

怖い存在でした。その父親の打ちひしがれている弱々しい姿と母親の涙

が、カルトの支配から私を自由にしてくれるきっかけになったのだと思

います。私の前で頭を下げる父はどんなに苦しかったか、その決断に至

るまでにどれだけ両親が悩み苦しんだのか。強さや威厳ではなく真逆の

人間の姿というものが、いかに人の心を動かすかということを、身をも

って知りました。そのギリギリの姿に私は救われたのです」と語ってい

た。そんなKさん家族の苦闘の日々が、主イエス・キリストの十字架の

歩みと重なり、十字架の出来事が事実として私の心に迫って来た。

*岩崎牧師は9月11日(土)13時よりZoomにて、福岡地方連

合の連絡会で講演されます。

Comments


Featured Posts
Recent Posts
Search By Tags
Follow Us
bottom of page