「竜との戦い」 泉清隆
1月15日「脱出」という礼拝宣教で、(袴田事
件に関係する)熊本典道さん(元裁判官)の事を取り
上げました。今回は袴田事件の袴田巌(はかまだ
いわお)さんについて記したいと思います。
57年前の1966年に静岡県で起きた一家4人殺害
事件において、先日3月21日、被告人とされ死刑
が確定していた袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再
審の開始が確定したことを受け、静岡市での報告集
会に約150人の支援者が集いました。袴田さんをめ
ぐっては、東京高検が再審開始を認め、東京高裁決
定について最高裁への特別抗告(決定に対する申し
立て)を断念したために、再審開始が確定し、静岡
地裁で今後開かれる再審公判で無罪になる見通しと
なりました。
袴田さんはこの日、姉の秀子さん(90)に付き添わ
れて壇上に上りました。支援者が「再審開始が決ま
ったので、巌さんの無実を信じてきた人が集まって
いるのですよ。ぜひ一言お願いします」とマイクを
渡すと「竜との戦いには皆の協力があって勝ち抜け
る。よろしくお願いします」と言われました。袴田
さんは2014年に釈放されるまでの47年超の拘禁生
活で精神を病み、現実と妄想の区別がつきにくい時
があるそうですが、そんな中、秀子さんは「厳にも
再審開始になったと言っているし、新聞も見せてい
る。白分の写真の載った新聞を食い入るように見て
いる」と自宅での様子を紹介し「長い裁判であと半
年、1年かかると思う。これからが正念場。どうぞ
もうしばらくお付き合いください」と訴えられまし
た。袴田さんの「竜との戦いには皆の協力があって
勝ち抜ける。」の発言について、現実と妄想の区別
がつきにくいという説明で書かれていましたが、彼
は獄中で1984年に洗礼を受けておられます。聖書か
らいうと、私には、とても的を射た言葉に聞こえま
した。ヨハネの黙示録12章などに出てくる「この
巨大な竜...全人類を惑わす者は、地上に投げ落とさ
れた」とあり、この地上は竜との戦いとなっていま
す。完全ではない、間違いやすい人間が人を裁く事
はできないのに、裁かなければならないという権力
の力で押し流されている状態は竜の仕業です。です
から「まだまだ目には見えない神ならぬものとの戦
いは続くが皆の協力(神の助け)があって勝つことが
できる」ということだったのではないかと私は思い
ました。
73巻4号の聖書教育45頁で、吉高叶牧師が「イエス殺
害」についての「指導者たちの結託」ということで、「祭
司長たち(宗教的貴族)と律法学者たち(思想・学問・教
育従事者)と民の指導者たち(行政担当者)がついに結託
して共謀していった、政治と思想や信仰が統合される
時とはどのような時なのかを暗示する出来事でもある」
と記しています。私は、今回の袴田裁判も、日本には
三権分立という仕組みがありますが、立法、行政、司
法が結託している状況であると思いました。まさに「竜
との戦い」です。過去、私が長くかかわってきた梅田
原発労働裁判でもそうでした。しかし、コリントの信
徒への手紙①3章13節「おのおのの仕事は明るみに
出されます。かの日にそれは明らかにされるのです。
なぜなら、かの日が火と共に現れ、その火はおのおの
の仕事がどんなものであるかを吟味するからです。」そ
れは私たちの希望です。
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