「襲う試練」 金子政彦
- kogabaptist
- 6 日前
- 読了時間: 3分
1. キジバトの巣
二月の中旬ごろ、我が家の庭にキジバトが巣を作っ
た。小さな巣に、卵が二個。キジバト夫婦は、寒風吹きす
さぶ中、昼も夜も交代で座り続け、卵を温めた。
2. ヒナの誕生
そして3/11、ついにヒナが生まれた。小さな声で、ピ
ーピー、ピヨピヨ泣いている。親鳥たちは、交代で、エサを
与え始めた。「四月に入るころには、巣立つかな…」家族
で、そう話していた。
3. 襲う試練
ところが…である。生まれて四日目、3/14の朝、朝の
ルーティーンにしているジョギングに出かけるときに、ハト
の巣をのぞくのが日課になっていた私は、…愕然とした。
巣が空になっている…! 親鳥も、ヒナも、一晩にして、い
なくなっている! 何が起こったのか?
朝っぱらから、ごそごそしている私に、家族が気づい
た。「ハトさんを驚かせるもんじゃないよ」とたしなめられ
た。それどころではない、緊急事態であった。「ハトがい
ない…」 家族も、驚いた様子だった。あたりを丹念に調
べたが、何の変化もなかった。
インターネットで調べたところ、ハトのヒナの天敵は、ヘ
ビやイタチ、カラスのたぐいだそうだ。まだ、寒さが厳しか
った3月中旬だったので、ヘビが襲うことは考えにくかっ
た。結局、何が、ヒナを襲ったのかは分からなかった。空っ
ぽの巣だけが残された。私は、かなりショックを受け、しょ
げてしまった。楽しみにしていたことが急になくなり、生活
のハリを失ったような感覚だった。
4. 放蕩息子のたとえ話
この体験をして、放蕩息子の帰郷のたとえ話を想っ
た。描かれている父親の気持ちを想像した。父親は、出
ていった弟息子がいなくなったとき、どんなにがっかりし
たことか。そして、その弟息子が、再び帰ってきたとき、ど
んなに嬉しかったことか。
キジバトたちは、その子育ての姿から、日常生活に疲
れ、固く、冷たくなりかけていた私の心を、解きほぐし、温
めてくれた。成長を「喜ぶ」気持ちを、思い出させてくれ
た。そして、命が試練に遭ったとき、心から、がっかりする、
悲しい気持ちになる、そんな経験もさせてもらえた。
放蕩した弟が帰ってきたとき、「弟は死んでいたのに生き
返った。いなくなっていたのに見つかった。」といって喜び、祝
宴を開いた父親。そんな父親の気持ちが、ほんの少し、分か
る気がした。
けっして、おおげさではない。命を大切に思い、いとおしく
思う気持ちが、心を温かく、柔らかにし、喜びをもたらすの
だ。
ハトは、気に入った場所には、また戻ってきて、巣を作るこ
とがあるそうだ。今のところ、戻っては来ていない。しかし、ま
た、ハトが帰ってきたら…私も祝宴を開くかな…そんな想像
をしつつ、放蕩息子のたとえ話を読み返した出来事だった。
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