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自分の事ばかりではなく  泉清隆

イソップ童話で有名なイソップは、古代ギリシャの奴隷でした。しかし、とても賢く、機転がきいたので、主人から大変信頼されていたそうです。

 ある時、「隣の家の結婚式に、何人くらいお客さんが来たのか見に行ってきてくれ」と頼まれた彼は、会場に着くなり玄関前に丸太ん棒を転がしました。そして、自分はやぶの中に身をひそめてお客が帰るのをじーっと待ったのです。式が終わり、お客は次々と玄関から出て来るのですが、皆、丸太に躓いては忌々しげに丸太をにらみつけ家に帰って行きました。ところが、あるおばあさんだけは、丸太に躓いた後で、それを玄関の脇にのけてから帰りました。戻ったイソップに主人は聞きます。「どうだった、何人くらい人が集まったか。」するとイソップは「おばあさん一人だけでした」と答えます。「そんなはずはないだろう。」するとイソップは「丸太に躓いたりけがをしたりはするのですが、誰一人としてそれをどけようとしませんでした。そんなのは羊と変わりがありません。でも、ただ一人だけ、おばあさんだけは、後から来る人たちのためにその丸太をどけたんです。そういうことができるのは人間だけです。おばあさんは、あの会場の中にいたたった一人の人間です。」

 イソップによると、真の人間とは、自分のことだけではなく、他の人のことまでも考えが及ぶ者だとし、何かが人を躓かせるなら、その不幸の原因を取り除くために行動を起こすことができる人こそ、本当の人間だと言ったのです。

「めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。」新約聖書フィリピの信徒への手紙2章4節

ギリシャ語でイソップはアイソーポスといいます。このイソップ寓話はキリスト教の学者によって受継がれて来て、中世ヨーロッパでのキリスト教の価値観を持った寓話になったとされています。

※以下のサイトを参考にしました。

https://biblegospel.org/broadcast/1069/

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