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「楽しむ蟄居~コロナ感染で思う」

「不易流行」、変えてはいけない、そして変わるこ とも良しとする言葉です。福岡県などに政府は4月 7日に新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づ く「緊急事態宣言」を出し、5月6日まで知事は外 出自粛要請、施設の使用停止という私権の制限を伴 う措置が可能となりました。グレタ(注1)さんが訴え 続けていますように今年の冬の暖かさを含めて気候 変動は人類を逆襲しています。人間が自然を制御で きると思いあがるなと。コロナ病原体の発症は解明 できていませんが、中国武漢から世界にアッという 間に感染が拡大しました。☆ウイルスは人間が決め た国境をあざ笑うがごとく各国に席巻し侵略を続け ています。貧者にも富者にも、地位あるものも無い ものにも無関係に拡大し続けています。「民主的で 平等な危機」(注2)という逆説的な平等です。一国の 問題ではないことを僕自身はイタリア,スペイン,ア メリカの感染者が中国の感染死者を凌いだ時に自覚 をしました。☆自分の生命を脅かす時に人間は防御 を始めます。何とかなるときに策を提案すると、ま だ尚早と声が大きくなることが日常です。人間は、 特にリーダーは一歩先を読み読み込んで指針を打ち 出さなければなりません。何とかならないときの策 は既に自分と家族の命が奪われた現実となりコロナ ウイルスを人間が制御できなかったことに慙愧の念 と恐怖を持つことでしょう。時間です。何とかなる ときの策に共感して猶予の時間づくりに協調するこ とです。☆目下コロナウイルスの治療法、ワクチン は世界には存在しません。開発中で医学的な治療が 不可能な状況です。その開発の時間を作るために唯 一しなければいけないことは、感染を広げないため に蟄居することです。ウイルスによる蟄居を楽しむ ことです。☆福岡県出身の葉室麟は直木賞受賞作「蜩 の記」で戸田秋谷(郡奉行)が幽閉中に家譜を編纂す る期限付きの期間を監視する檀野庄三郎の変容を描 いています。静謐な日々に戸田秋谷の命と向かう姿 です。蟄居準備の僕は新刊の帚木蓬生の「守教」(注 3)を読み始めました。「文学は何の役に立つのか」 の問いに平野啓一郎は「今の世の中で正気を保つた め」(注4)と答えを出しています。読書も一つですが、 メルケル独首相がコロナウイルス対策について国民 に語ったメッセージ(3月18日)ではスカイプ、e-mai l、電話、手紙で関係性を続ける方法を提示しまし た。☆突然のウイルスの侵略は人間のこころ、良心 に挑戦しています。人工呼吸器の不足で老齢者のそ れを若者のマスクに充てるという治療者の良心の選 択が治療者自身に求められています。

間髪を入れずに選択する決断は何が正義か僕自身に問 われています。僕自身解答は見い出せませんが思慮す る時間が現在あります。☆ウイルスは人間から神との 関係性を奪うことはあり得ません。むしろしっかりと 関係性を繋げる好機です。「そして大きな地震があり、 方々に飢饉や疫病が起こり、恐ろしい現象や著しい徴 が天に現れる」(ルカ21章11節新共同訳)産みの苦しみ の始まり苦痛の始まりですが、築かれた関係はいかな る者でも壊すことはできません。先人たちは不易の中 に流行をどのように結合させてきたのだろうかと蟄居 の身は解を求め始めています。

                               内山賢次 2020年4月8日

(注1)2003年生。スウェーデンの環境活動家

(注2)大澤真幸/社会学者 (朝日新聞2020年4月8日)

(注3)吉川英治文学賞,中山義秀文学賞。「寛容さを喪い つつある現在の警鐘で,どこかで何かに耐えながら生き ているすべての人々のため(新潮文庫解説文から)」帚 木蓬生(ははきぎ・ほうせい)

(注4)朝日新聞「論壇 コロナ禍と国家」2020年3月26日

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