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賢者の贈り物          金子純雄

クリスマスを迎えるたびに、私はユーモアとペーソスに満ちた短編小説家として知られる オー・ヘンリー(O.Henry)の上記の作品を思い起こします。

 クリスマスを前に、貧しいけれども深く愛し合っている夫婦がそれぞれにクリスマス・プレゼントをと考えます。妻は長く美しい髪が自慢でした。夫は祖父から譲られた懐中時計を大切にしていました。妻が長いしなやかな髪の毛に手を添えてゆすりあげる仕草、夫が懐中時計をポケットから取り出して時間を確かめる姿、それはお互いに見慣れた光景でした。夫は妻に髪飾りを、妻は夫に時計をポケットに結び付ける鎖を送りたいと考えます。しかし、貧しい二人には求めるものを買うだけのお金がありません。そこで夫は大切な時計を売って妻の為に髪飾りを求めます。妻は髪の毛を売って夫の時計の為に鎖を買い求めます。

 クリスマスの朝、お互いにクリスマス・プレゼントを手渡そうとした二人はいつもと違った相手の様子に一瞬、立ちすくみます。妻の長い美しい髪の毛は無く、夫が時計をポケットから取り出すいつもの仕草が見られないのです。しかし、事情を察した二人は緊(ひし)と抱き合って「クリスマスおめでとう」と挨拶を交わすのでした。

 手元にあるはずのその短編が収められてる本が見当たらず、私の記憶だけの粗雑な作品紹介になりましたが、この作品に魅かれるのは、自分の大切なものを惜しみなく投げ出して相手に尽くそうとする愛が描かれているからです。有用性や効果を求めて、所謂「役に立つかどうか」でことを図ろうとする合理性、あるいは効果や結果で成否を論じる打算的な生き方が氾濫する現実社会の中で、「神が惜しみなく御子を与えてくださった」深い愛に思いを馳せながら、クリスマスを迎えたいと思います。

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