12時の訪問者
- 泉清隆
- 2018年8月3日
- 読了時間: 3分
ジ ムという 名 の老紳士が、 毎日昼の12 時になる と教会に やって来ては、 ほんの数分、会 堂にいたか と思うとすぐ出て行ってしまいます。教会の管理人 は、 そのうちに教会の大切 な備品がなくなりはしな いかと心配して見 守っていましたが、 何もなくなり ま せんでした。 それでも 不 思 議に思った管理人はあ る日、 そ の老紳士 に 声をかけてみました。 「こんにちは。とこ ろであなたは、 毎日ここへ 何 をしにいらっし ゃるのですか。」老紳士 は丁寧 に 答 え ました。「祈るために来ております。」しかし、 そ の 答えでは管理人 は納得せず、再び尋ねました。「でも、 祈るためにしてはち ょっと 短かす ぎ ま せんか。 現 れ たかと思うと、すぐ帰ってしまうのではありま せ ん か。」老人はまた 答えました。「 私には十 分なのです。 毎日、 私はここに来てこう祈るのです。『イエス 様。 ジ ムでございます』と 言って、し ばらくお 話しする のです。 それからすぐ帰るんですよ。」 ジ ム は それからし ばらくして、交通 事 故 に 遭い、 足 を骨折して入院しました。ジ ム が入院した病院 と いうのは、 怒りっ ぽ い 患者が多く、四六時中、 不 平 不満ばかりがこだまするような病院で、 そこで 働 く 看護士さんたちにとっては、 実 に厄介 な 所でした。 とこ ろが、ジ ム が入院してから、病院 の雰囲気が一 変しました。 不平もなくなり、楽し そうな 笑 い 声 が 聞こえるようになったのです。 不 思 議に思った看護 士は皆に尋ねました。 「何 が そんなに嬉しいの。」 患者たちが 口 を 揃えて 言いました。「 それは、ジ ム お じさんのおか げですよ。 足 は痛むし、不自由なのに、いつも嬉し そうだし、 決して文 句 を 言わないから ね。」 看護士さんがジ ム の ベ ッ ドのとこ ろへ行くと、ジ ム は幸せそうな 顔 を 浮かべて 横になっていました。 「ジ ム。この 人たちはあなたのおか げで、この病院 が 変わったと 言っているけれど、いつも幸せそうに していられるのは、どうしてですか。」 ジ ム は即座 に 答えました。「 それは、 私 の訪問者のお か げなのですよ。」看護士さんは 驚きました。という のは、 それまで 誰もジ ムを見 舞いに来た 人は一 人 も いなかったからです。 面 会 時 間 の 時、ジ ム の ベ ッ ド のそばにある 椅子はいつも空いているのです。
看護士さんはまた 聞きました。「いつ、どなたがあな たを訪ねて来るのですか。」ジ ム は 目 を 輝 か せながら 答 えました。
「 毎日12 時になると その方はここに来て、 ベ ッ ド のそば に 立ってくださるのです。 そして その方 は 私を見つめて、こうおっし ゃるのです。『ジ ム。イエ スだよ』って ね。」 「わたしは 世 の 終わりまで、いつもあなたがたと 共 に いる。」(マ タイによる福音書28 章20 節)イエス・キ リストは 私 と 共にいてくださいます。
Comments