「その声」を聞く
- 泉清隆
- 2018年12月13日
- 読了時間: 2分
香 住ヶ丘バ プ テスト教会員で、2010年に93 歳 で召された、岩橋文吉さん(福岡 女学院院 長、大 学 初 代 学 長)が、次のよう な お 話しをし て くださっ た こ と がありました。 「私が小学校4年生の時から3年 間 受 け 持って くださ っ た服部という 先 生 がおられました。服部先生は師 範 学校(今で言えば 教育大学)を卒業 して初 め て の担任 で した。ところがその後戦争が始まり、 先生とは音信 不 通 になってしまいました。 戦後、ご 長男と一 緒 に名古 屋に住 んでおられるという こ と がわかり、私は どうし てもお会いしたくて名古屋まで 行きました。 タクシー で「服部」と書かれた表札 の 家の前に立ったときには 胸が 高 鳴りました。ご 長男の 奥 様 が 出てこられました が、服部先生は老齢のために 床 に 伏 し ておられ 面会で き ないという ことでした。それでも、 どうし ても会い たいという 思いで、 先生の 休まれ ている 隣 の部屋 の 襖 の隙間から一目先生を拝して挨拶さ せてほしいと 頼 み、そう さ せ ていた だきました。そうするとその時に、 蚊 の 鳴くよう な声で「文吉では ないか」という声 が し ました。びっくりして部屋 に飛び込んだ私に「やっぱ り文吉じゃ ったのう ぉ」と 言われたのです。「 先 生 ど うし て 私 だとわかりましたか」と 訊くと「お前の声は 昔のまま だよ」と、いとおし むように 言われました。 30 数年ぶりに会 った教 え子の声を 覚えて い て くださ っていた 先生の愛の 深 さに、私は 頭 を 畳にすりつけ た まま上 げ る こ と ができませ んでした。」 「その声を知る」とは、 このよう な 深い愛の 結びつ きをいうのでし ょう。
「羊はその声を聞き分ける。羊飼いは自分の羊の名を 呼んで連れ出す。 自分の羊をす べ て 連れ出すと、先頭 に立って行く。羊はその声を知っているので、 つ い て 行く。しかし、 ほかの 者には 決 してつ いて行 か ず、逃 げ 去る。 ほかの 者たちの声を知ら ないからで ある。」
ヨハネによる福音書10章3~5
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