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「和解の子」  泉清隆

今から60年ほど前、カナダのドン.リチャードソンとキャロル.リチャードソン宣教師がパプアニューギニアのイリアンジャワというところのサウイ族の村の人々に、キリストの福音を伝えたのですが、全く通じませんでした。しかしイエス・キリストを裏切ったイスカリオテ・ユダの話をした時、彼らは立ち上がって手を打ちながら、ユダをほめたたえたそうです。この部族のモラルは、現代社会と正反対で、人生で一番優れたことは、いかにして相手を鮮やかに欺いて裏切るかという価値観で生きていたのです。

 ところが、裏切りを最高の美徳として生きていたので、裏切りの競い合いが始まり、この部族では村同士の抗争が何年間も続き、やがて双方の村とも被害が大きくなり、人口が減ったのです。戦いに疲れ果てた彼らは和解するのです。

 しかしその和解が罠ではないという証拠に正真正銘の契約の結び方がありました。それはタロップティム(和解の子)というものです。それは争っている二つの部族の中から、生まれたばかりの赤ちゃんを双方の族長に渡して交換します。その子どもが生きている間は、争いはしないという契約です。もし裏切れば、相手方に行った自分たちの赤ちゃんが殺されてしまいます。それでこの儀式をもって取り交わす和解だけは本物の和解になるのです。

 リチャードソン宣教師はこの習慣を用いて、神がしてくださったことを伝えました。神は私たちと和解するために御自分のひとり子イエス・キリストをこの世に渡されました。

 サウイ族はこの儀式で戦いが終わることをみんなで喜ぶのですが、その大喜びの中で、例外的に涙が止まらない人がいます。それはその和解のためにわが子を手放す母親です。産んで育ててきた子どもを自分たちを攻撃していた人々の手に愛する子が渡るのです。別れの時には胸が張り裂けんばかりになっているのです。

 神は和解のために、ご自分のひとり子イエス・キリストをこの世に送ってくださいました。そしてイエス・キリストは十字架に死なれましたが三日目によみがえさせられました。

  

「ピース・チャイルド」ドン・リチャードソン著

須賀真理子:訳 いのちのことば社 より

ISBN: 978-4-264-01982-4

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