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「平和憲法」に流れる信仰の息吹 金子純雄

先々週の11月3日は「文化の日」でしたが、現憲

法公布の日でもありました。「憲法記念日」は5月3

日ですが、当初は11月3日を、という案もあったよ

うです。戦前は「明治節」と呼ばれ、明治天皇の遺

徳を顕彰する日であったことから、明治維新以降、

軍国主義への道をひたすら歩んできたことへの深い

反省も含めて施行の日、5月3日に決定されたという

経緯を聞いたことがあります。

わたしが生まれたのは満州事変が起こった翌年で

した。中学1年生の夏まで戦時体制の中でひたすら

「お国のため、天皇陛下のために」一身を捧げるこ

とだけを教えられてきた私にとって、敗戦は信じが

たいことでした。原爆が落とされてもなお、元寇の

難の時と同じように「神風が吹く」と信じ、敗戦を

認めようとしない人々が少なからずいたのです。し

かし、日本は負けました。軍は解体され、神聖天皇

制は廃棄され、民主主義が息を吹き返してきました。

「天皇は神聖にして冒すべからず」と規定された絶

対天皇制の下で、天皇の名を操って意のままに国民

を戦争へと狂奔させた人々は裁かれ、新しい憲法が

制定されます。国民主権を謳い、世界に例をみない

戦争放棄を高らかに宣言し、諸国の人々と「愛と信

頼のきずな」で結ばれて歩む決意を表明した「平和

憲法」は、まさに廃墟の中から生え出た一輪の花に

も似て荒ぶる少年の心に歓喜と希望の光を与えて止

まないものでした。新憲法施行と同じ年月にわたし

はキリストによる新生を信じ、告白してキリスト者

としての一歩を踏み始めました。

この日本国憲法の成立について、GHQから押し付

けられたとか、戦争放棄の9条は世界情勢から考え

ても現実的ではないと、改憲の声も少なからず聴き

ます。歴史を蒸し返すような主張や議論、或いは策

動や挑発に乗らないように気を付けたいと思います

が、わたしは最近、現憲法作成に深く関わった人た

ちの一人に、鈴木義男という人を知る機会がありま

した。法律の専門家で、片山内閣で法務大臣を務め

たこともある人ですが、わたしが住んでいた仙台の

ミッションスクール「東北学院」の院長も務められ

た篤信の方です。「ギダンさん」と愛称で呼ばれる

ことも少なくなかったと聞きますが、親しみ深い魅

力的な方だったようです。

東京帝国大学在学中に大正デモクラシーの旗手と言わ

れる吉野作造の薫陶を強く受けたことも知られていま

す。その吉野作造は日本の政界・教育界に多大の影響

力を及ぼした多くの仲間と共に仙台の尚絅学院創立者

・ブゼル女史のバイブルクラスで学んだ人で、戦前の

仙台バプテスト教会(現在の日本基督教団仙台ホサナ

教会)員でした。現在の仙台バプテスト教会の創立時

には現ホサナ教会や尚絅学院の関係者が少なからず協

力・活躍してくださっています。目には見えなくとも

日本国憲法の中には「平和の主」:イエスに根付く信仰

の息吹が強く流れていることを心に深く刻み付けたい

と思います。

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