「新しいいのちの語り部」 内山賢次
8月は6日原爆忌、8日八幡大空襲、9日原爆忌、15
日敗戦と心に刻む大事な日がそこにあります。敗戦
から77年目の8月の6日、9日は時刻に合わせて黙祷
をし、1分間の祈りはあまりにも短時間でした。怒
りのヒロシマ、祈りのナガサキと言われますが、広
島平和記念式典、長崎平和祈念式典と式典名にそれ
ぞれの思いがあることも想像できました。「核」使
用は即死に繋がり、生き残ったとしても大量の放射
能を浴びたものとして生きなければならない非業の
生の物語を生みました。☆「聖書教育」誌(バプテ
スト連盟発行)の8月15日前後の聖書の箇所はエフェ
ソの学び(7月~8月)からダニエル書の学び(8月~9
月)の編集ですが、8月第2週の学びはマタイ5:9
で週題は「平和を実現する人々」が挿入編集されて
います。☆古賀教会の祈祷会(聖書の学びと祈り会)
では聖書教育誌のプログラムに沿って聖書の学びと
分かち合いが行われ、牧師による祈りの課題、来会
者一覧、次週の聖書、讃美歌などが印刷されたペー
パーが準備され、その下方に「平和を実現する人々」
の他の訳が並列されていました。英語ではpeacemak
ersという訳が紹介されており、つくりだす者(岩波
訳)、つくりだす人たち(本田哲郎訳)、平和のため
に励む人(バルバロ訳)、平和をもたらす人(フラン
シスコ会訳)などが並んでいました。☆イエスさま
が故郷ガリラヤ湖畔で語られた山上の垂訓として知
られています一節です。イエス時代のユダヤはロー
マ帝国の属国でユダヤ教徒が多数を占めエルサレム
神殿を中心とした神殿経済の下で祭司たちが幅を利
かせています。(旧約)聖書を説く律法学者たちが一
般の人々に説き聞かせ、律法を守れないものにとっ
ては暮らし難い社会構造であったと想像します。ま
してや女性、子どもたちは眼中にはない男中心の社
会でした。☆ユダヤ社会では現代でも律法を守りぬ
くことを生活の中で最重要しています。ユダヤ教行
事は勿論、食事規程も同様です。当時、厳格に守ら
れている渦中でどうしても律法を守ることができな
い人々も暮らしています。神殿にささげものができ
ない、土曜日に集まって礼拝をすることができない
羊飼いもいたでしょう。イエスは精神的な圧力とな
りストレスを抱えて生きざるを得ない人々に「平和
を造り出す者」と語りかけたのです。☆日本は日清
戦争で台湾を手に入れ、15年後の1910年には韓国を
植民地化し、神社の強制参拝、日本語の強制、名前
さえも日本式に変えさせた歴史があります。その時
に抵抗した「平和を創り出した」女性、柳寛順さん
の生家を若者たちと訪れたことを思い起こします。
☆「長崎市爆心地に近い旧城山国民学校で爆風を浴び
たカラスザンショウの木が2016年春に芽が出ることは
なかった。そして2021年に校舎跡にできた平和祈念館
の中に原爆を耐えたねじ曲がった姿を展示した。木は
陽光を浴びることもなく茂ることもない。だが『原爆
の証人』という不朽の使命を負い、生き続けていく」(朝
日新聞/天声人語8月9日のエッセンス)と筆者は発信し
ています。奇跡的に生き残った木は朽ち果て130年の樹
齢を閉じましたが、事物にも肉体の命と、見えない命
があることを伝えています。☆キリスト教会では二つ
のいのち、イエスが十字架に架けられ絶命した命と、
蘇りの生命があることを教理として学びます。生活の
中からpeacemakersとなっていく語り部たちの、非業の
生を繰り返さない証人《実践者》になれとの叫びが今
日響いてきます。
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