「詩編について」 泉清隆
詩編は聖書の中で最も長い書で、神への賛美や神
の助けを求める祈り、また神への信頼を表す詩など
があり、悲しみと喜び、疑いと信頼、痛みと慰め、
絶望と希望、怒りと安堵、復讐心や赦しといった人
間のありとあらゆる感情が表現されています。祈り
と賛美の形で詩編は生活のすべてを神と分かち合う
よう私たちを招いています。賛美、感謝、信頼、悔
い改め、神の愛と助けなど聖書の中心テーマが扱わ
れているこの詩編は、礼拝で用いることを目的に集
められ、全体としては賛美歌集や祈祷書のようなも
のとして最初はエルサレムの神殿で、後にはユダヤ
教の会堂、キリスト教の教会で使われてきました。
そして、詩編は、全世界を造り、愛し、人間の生活
すべてに関心を持っておられる唯一の真の神を信
じ、従おうとする信仰者として、どのように生きる
かを学びたいと願う人々によって読まれてきまし
た。詩編は数百年の歳月をかけて成立した書物です。
ユダヤ民族の歴史の初期に書かれた詩編もあれば、
バビロン捕囚後に書かれたものもあり、表題にダビ
デを挙げている詩編が73編あります。表題でダビデ
が置かれていた状況を説明しているものが13編あ
り、苦難のとき神に信頼を寄せる者の模範としてダ
ビデが描かれています。
詩編は伝統的には5巻に分けらます。第3巻の最後
の詩編89編はダビデの子孫が絶えずイスラエルを治
めるという約束が語られていますが、(89.1-38)。
その後半では神が怒ってこの契約を破棄したと記さ
れています(89.39-52)。ですので第1巻から第3巻
はB.C.586年にエルサレムと神殿が破壊されてイス
ラエルの人々は捕囚に連れ去られ、ダビデ王朝は断
絶するという悲劇への応答として書かれたという説
が生まれました。第4巻はこの危機にこたえて、神
こそが真の王であり、全世界と人類の神であると宣
言しています。(詩93-99)。第4巻冒頭の詩編90編の
表題「神の人モーセの詩」は巻頭の詩としてふさわ
しいものです。王も土地も神殿もない時代に民を導
いたのはモーセであったからです。その他の詩編に
はアサフやコラの子などの作者の名が書かれていま
す。音楽上の付記があるものや、どのような行事や
祭日に歌うかという指示がされているものもありま
す。
イエス・キリストが教えていた時代にも詩編は用いら
れていました。新約聖書も何度も引用されています。
詩編118編1節は新約聖書に6回も引用されています。
詩編全体は5巻に分けられて、その部分には「アーメン」
で終わる節があることから分かります。(41.14、72.19、
89.53、106.48)。モーセ五書(創世記から申命記)に
似ていると思います。
日本聖書協会 新共同訳 スタディバイブルより編集
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