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『あなたがたは世の光である』 金子政彦

糸賀一雄さんという方がおられます。日本の「知

的障害者の父」とも呼ばれています。戦災孤児と知

的障害児のための施設「近江学園」や、重度心身障

害児のための施設「びわこ学園」をはじめとした多

くの障害者施設の設立に携わり、知的障害のある人

の福祉法制定に尽力された人です。糸賀さんは、そ

の一生を障害福祉のために捧げました。

糸賀さんは「共に生きる」を実践した人ともいわ

れます。糸賀さんは1914年、鳥取県生まれで、母子

家庭で育ちました。高校時代にクリスチャンになり

ました。小学校の代用教員を経て、滋賀県庁で公務

員として働いた後、戦災孤児や障害児のために力を

尽くそうと活動を始めます。当時は国(行政)も、障

害者に対して、彼らの人権を守る法律や概念すらな

く、理解が乏しかった時代でした。そのような時代

の中で、知的障害児等の入所・教育・医療を行う施

設を次々と設立しました。糸賀さんはこれらの施設

について、障害者を隔離収容するのではなく、社会

との橋渡し機能を持つという意味で「コロニー」と

呼んでいました。

そんな糸賀さんがことばを残しています。「この

子らに世の光をではなく、この子らを世の光に」と

いうことばです。「この子らを世の光に」というこ

とばは、聖書のことばをモチーフにしています。新

約聖書マタイによる福音書5章14節にある「あなた

がたは世の光である」という聖句です。子どもたち

に対して憐みの政策を求めているのではなく、この

子らが自ら輝く素材そのものであるからもっと輝い

てほしいという、子どもたちの可能性を見出した信

仰のことばといわれます。イエス・キリストを知っ

た糸賀さんが、自分の傍らにいる知的障害児たちと

接する中で、その関係性の中から与えられた「信仰

のことば」です。

イエスさまは、自分で自分を救うことのできない救い

主でした。そんなイエスさまを神さまは、復活させら

れました。聖書を読むと、弱さは克服するものではな

く、弱さはさし出し合うものだと思わされます。それ

は、弱さと弱さの交わるところに大切な命が生まれる

ことを、イエスさまの物語が指し示すからです。

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